ジャガイモ(ナス科ナス属)
ジャガイモは世界の食料飢饉(ききん)を救ってきました。ロシアが度重なる経済危機を迎えても餓死者を出さなかったのは、多くの国民が「ダーチャ」と呼ばれる市民農園でジャガイモを栽培していたからだといわれています。
ベランダでのジャガイモ栽培は貯蔵できるほどの収穫量はありませんが、土の中からゴロゴロと芋を掘り上げる経験は楽しめます。ジャガイモの花をこよなく愛したマリー・アントワネットに思いをはせることもできます。
スーパーに並んでいるジャガイモは「男爵薯」と「メークイン」が多いです。家庭菜園では皮が赤い物、中が紫色の物など数多くの品種から好きな物を選べます。
3月になったら、日当たりと風通しの良いベランダで、大型プランターや10号(30cm)以上の鉢などに市販の培養土を入れます。種芋は60gなら二つに、それ以上に大きい物は3~4個に、各切片に芽が均等に付くように切り分けます。
1~2日乾かした種芋の切り口を下にして、深さ7~8cm、株間20~30cmで植え付けます。
一つの種芋から数本の芽が出てきます。そのままにしておくと小さな芋しか収穫できません。芽が10cmぐらいに伸びたら、元気の良い芽を1~2本だけ残します。残す芽の株元をしっかり押さえて、かく芽を横に倒して引き抜きます。
追肥は水やりを兼ねて1週間に1度1000倍の液肥を施します。芋に日が当たると緑化してしまうので、適宜増し土をします。乾き過ぎや湿り過ぎにならないように水やりをします。6月中下旬になると枯れ始めます。半分以上枯れ込んだら、晴天の日に掘り上げ、日陰で半日ぐらい乾かして保存します。
取れたてのジャガイモは皮が柔らかく、丸ごと食べられます。自家菜園なので農薬の心配もありません。ゆでジャガイモのバター掛けや丸揚げなどにしてお楽しみください。
藤巻久志(ふじまきひさし)
種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。