農薬に頼らない「半身萎凋病」の防除について
ナスの生産量に被害を及ぼす土壌病害「半身萎凋病」は全国的に問題となっています。防除方法の一例として、土壌くん蒸剤による消毒がありますが、作業難易度の高さなどから導入困難な側面があります。そこで今回は、ブロッコリーをナスの前作にすることで、半身萎凋病を軽減する方法をご紹介します。
半身萎凋病とは
●症状
下葉に褪色斑を生じ、しおれた葉の縁は上面に少し巻きあがり、黄白色となり枯死します。発病は徐々に上の葉に進み、発病葉は落葉します。初期の症状は枝の片側に限られ、葉も片側だけがしおれることがほとんどです。
●伝染経路
病原菌はカビの一種で、ナスのほかにもピーマンやブドウなど、多くの植物に感染します。菌は根から侵入し、導管を通って徐々に株全体を侵食。茎や葉に多数の微小菌核を作り、次の感染源になります。微小菌核は土中で3年以上生存します。病原菌は土壌伝染性のほか、発病株から伝染する特性もあります。菌の生育適温は22~25℃で、30℃以上になると生育不良になることから、夏季の高温時には一時的に発病が休止します。
なぜブロッコリーの前作で防げるのか
試験結果から、発病株率30%以下の農地でブロッコリーを前作とした場合に、発病株率を約半分に抑えられることが分かりました。その抑制のメカニズムは次のように推察されます。
①半身萎凋病の病原菌は、ブロッコリーへも感染するが、地上部の葉で微小菌核が形成されないため、土壌中の微小菌核数は増加しません。
②ブロッコリー残渣に含まれるリグニンを分解する土壌中の糸状菌から分泌されたリグニナーゼは、同時に微小菌核の主成分であるメラニンも分解し、微小菌核を減少させます。
【ブロッコリーの発病抑制の仕組み】
注意点と留意事項
- 発病株率が30%以上の農地では効果が期待できないので注意してください。
- 半身萎凋病に抵抗性のある接ぎ木苗を併用してください。
- 半身萎凋病の発生していない農地でも予防的に導入すると効果的です。


