アレロパシー「他感作用」について
近年、「植物間コミュニケーション」と呼ばれる現象が注目されています。草刈りの際に植物から放出される青臭い匂いには情報が含まれており、周囲の植物に伝わることで防御反応を引き起こすことが研究により分かっています。今回は、植物が化学物質を放出し、他の植物の成長を妨げる現象「アレロパシー」についてご紹介します。
アレロパシーとは
アレロパシーは、「植物が放出する化学物質が他の生物に阻害的あるいは促進的な何らかの作用を及ぼす現象」と昭和12年に植物学者のモーリッシュにより定義された概念で、「他感作用」と和訳され、その化学物質を「他感物質」と呼びます。
この現象は昔から知られており、畦畔に栽植されているヒガンバナは鱗茎にアルカノイドを含み、この物質はモグラやネズミの忌避効果があり、畦畔の穴あけを防ぐほか、防虫や抗菌などの効果もあります。ヒガンバナは種子のできない植物なので、人為的に植えられた、理想的な畦畔植物です。
この現象は昔から知られており、畦畔に栽植されているヒガンバナは鱗茎にアルカノイドを含み、この物質はモグラやネズミの忌避効果があり、畦畔の穴あけを防ぐほか、防虫や抗菌などの効果もあります。ヒガンバナは種子のできない植物なので、人為的に植えられた、理想的な畦畔植物です。
農業現場では
農地では、アレロパシーによる作用として連作障害が起きています。連作障害とは同じ畑に同じ作物(同一の科)を栽培し続けると、生育や品質が低下する現象です。土壌病害が主な原因とされていますが、他感物質によって引き起こされることもあり、この場合は土壌消毒の徹底や土壌改良剤を投入しても生育の回復は望めません。この被害の典型的な例はアスパラガスで、本来は微生物に分解される他感物質が、長期間の連作で蓄積され自己中毒を起こします。
代表的被覆植物「ヘアリーベッチ」

アレロパシー活性が強い被覆植物として、ヘアリーベッチが代表的です。雑草抑制の強い化合物である、「シアナミド」を土壌へ分泌しており、除草剤使用量の削減に有効です。また、シアナミドは尿素を経てアンモニアへ分解され、窒素肥料になります。他にも、ヘアリーベッチの根圏土壌には「オカラミン」という抗菌殺虫成分を合成する糸状菌(カビの仲間)が共生し、キウイフルーツ園では「かいよう病」の発生を抑制する報告があり、殺虫や抗菌の効果も確認されています。さらに、この糸状菌はトマト、大豆、ジャガイモ、トウモロコシの生育を促進する効果が確認されています。
※シアナミドは石灰窒素の成分
【ヘアリーベッチのアレロパシー作用】
